森たかゆきのブログ

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【区政の論点】中野駅前に一万人規模のアリーナは必要か

5月1日のエントリで、中野サンプラザ存続の可能性について書きました。本エントリでは、その続編として、現在の区長が進める一万人規模のアリーナ建設計画について書きたいと思います。

まずは、今年の予算特別委員会総括質疑での私の発言から紹介します。

一万人アリーナの話を伺いたいと思います。区役所・サンプラザ地区再整備事業の中で、一万人アリーナという話があって湧いたように出てきた話でありまして、我々としてはいまだに何でそれが必要なのかというのはよくわからないわけであります。これまでのようにアリーナによって多くの人が中野に来て、まちが活性化するんだ、まちづくりを牽引するんだというような御答弁を繰り返されても、人口減少、超高齢化が見えている中で、なかなか、はい、そうですかとは言えないなというふうに思っています。(中略)一番の懸念というのは、この一万人のアリーナの所有に中野区がかかわるということになると、超長期にわたって不安定要因を抱え込むことになるんじゃないかというところが懸念されるわけであります。今、札幌ドームは札幌市が持って、運営会社の出資もしていますけれども、日本ハムファイターズが出ていくということで右往左往していると。こういうようなことになるわけですね。お金もそうですが、そういうのに対応する労力というものもとられていく。そういうのはちょっとよくないんじゃないかというふうに思っています。逆に言うと、民間所有。民間所有って、今のサンプラみたいな形じゃなくて、純粋な民間資本での所有と運営、これができるなら一万人プラス、その他の施設利用者、周辺含め、利用者、鉄道利用者をさばけるというのであれば、まだ理解できるのかなと思いますが。

私の場合、総括質疑は原稿読みではないので少し言葉足らずで分かりづらいところがあるかと思いますが、趣旨としては、

・一万人規模アリーナの必要性が分からない

・区が所有に関わることで、超長期にわたって財政的な不安定要因を抱え込むことになることを懸念する

・逆に、純粋に民間資本で成り立つならば、それに合わせて区が周辺のインフラ整備を進める、くらいの関わり方ならばまだ理解できる

ということです。

こうした私の基本的な考えを示した後に、一万人アリーナが民間所有・民間経営で成立する可能性はあるのか、一度作ったら50年60年70年使うことになるがそこまでの収益性を見通すことは誰にもできないと思うがその点の認識は、といったことを質しました。

一つ目の民間所有・民間経営で成立する可能性については、「これまでは民間が所有する例は少なかったが、最近そうしたケースも出てきたので可能性はあるとみている」という答弁でした。

おそらく、株式会社ぴあがみなとみらいに建設を計画している施設のことを念頭に置いた答弁なのだろうと思いますが、みなとみらいと中野では条件が違いすぎて「みなとみらいに出来るから中野でも可能性はある」と言われても説得力がありません。この時の区側の答弁にもありましたが、固定資産税などの関係でアリーナのような施設を純粋な民間で所有している例はほとんどありません。私としては、そんな中でも中野での可能性はあると考えているのか、を問うたつもりだったのでちょっと残念な答弁でした。

二つ目の長期の収益性に至っては、「将来に渡って選ばれ続ける施設であるべき」という「べき論」の答弁しか返ってこず、そのための戦略といったものは見えてきませんでした。

一体どういう経緯で「一万人規模のアリーナ」という話が出てきたのかもよく分からないのですが、いずれにしてもこうした答弁を聞いていると、具体的なことは現時点で何も考えられておらず、とにかく一万人アリーナありきで進んでいるのだという印象を強く受けました。

私は、区に財政負担が生じる、または将来にわたって区財政に不安定要因をかかえるような形での一万人アリーナ建設には反対です。前述した通り、純粋な民間資本による整備が可能なのであれば検討の余地はあるのかなとは思いますが、その場合も諸手を挙げて賛成とは言えません。過去の教訓から学ぶ必要があります。

今の中野サンプラザは、元々は雇用・能力開発機構(労働省所管の特殊法人)が建設したものですが、同機構 から中野区に対し譲渡の打診があったことをきっかけに、平成16年に中野区が民間企業グループとの共同出資による第3セクター株式会社まちづくり中野21を設立し、同社が平成16年11月に中野サンプラザを取得しました。ところが、数年後には民間企業から中野サンプラザの営業事業から撤退したいという意向を示され、平成20年には結局中野区がまちづくり中野21の株式をすべて取得することとなりました。

(こうした現在に至るまでの経緯は、中野区のHPに「中野サンプラザ取得・運営等事業について」としてまとめられています。)

仮に一万人規模のアリーナが純粋な民間資本によって整備されたとしても建設後何十年かの間のどこかの段階で区が取得せざるを得ないような状況に陥る可能性もあると考えられます。民間資本による整備の場合も、そうしたことにならないよう歯止めをかける仕組みが必要です。

そもそも論で言えば、私は区が「一万人規模のアリーナの建設を目指す」という目標設定をすること自体に違和感があります。一万人規模がいいのか、今と同様二千人規模がいいのか、もしくはその間の五〜六千人規模か、はたまたアリーナ機能は不要ですべてオフィスや商業施設にした方がいいのか。こうした決定は、政治的決定よりも市場原理に基づく決定の方が馴染むでしょう。市場原理では成立しえないものを政治や行政の力で無理矢理成立させれば、どこかで歪が生じ、そのツケを区民が負うことになるのではないかと危惧します。

現区長は一万人アリーナ計画には「夢がある」と思って推進されているようでありますが、その夢が悪夢となる可能性にも率直に向き合うべきであると考えています。

区が検討する一万人規模アリーナを含む新施設のイメージ図
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