森たかゆきのブログ

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【区政の論点】中野サンプラザの存続は可能なのか

中野区議会議員の森たかゆきです。

4年に一度の区長選挙が近づいてきました。大きな争点の一つとなりそうなのが、まちのシンボルでもある中野サンプラザを含む「区役所・サンプラザ地区再開発」を巡る問題です。

現在の区長は、区役所と中野サンプラザの敷地を一体的に再整備し一万人規模のアリーナを目玉とする大型施設の建設計画を推進しています。この計画に対しては議会でも区民の間でも賛否両論様々な議論がなされています。私自身は、できれば中野サンプラザを残したいという立場からこれまで議会の中で発言をしてきましたが、現実的にはかなり難しい状況になってしまっていると言わざるを得ません。本エントリでは、この点について皆さんと情報共有をしたいと思います。

〇耐震面は問題なし
建物が継続的に使用できるかどうかを判断するにあたって最も重要なことは、その安全性です。鉄筋コンクリート造りの建物の耐用年数は一般的には約50年程度と言われています。1973年に完成した中野サンプラザはもうすぐこの50年を迎えます。だから建て替えが必要なのだとおっしゃる方もいるのですが、中野サンプラザは素人目に見ても「一般的な建物」とは言い難いものです。2014年8月に公益財団法人日本建築士家協会が中野区に提出した「中野サンプラザの活用に関する要望書」には、「構造的にも二百年の耐用を前提に設計されている」との記載があります。

二百年という年数が本当に現実的かという点は私には判断がつきませんが、少なくとも現状では耐震性能に問題がないということは中野区も認めています。

平成26年09月12日中野区議会本会議(第3回定例会)の会議録 

現区役所エリアとの一体的な再整備の計画とは切り離し、中野サンプラザ という建物単体で見た場合、耐震性など安全性の面からの建て替えの必要性はどの程度あるのでしょうか、お答えください。

中野サンプラザ は、昭和48年竣工の建築物であり、現時点で集客施設としての耐震性を有しており、株式会社まちづくり中野21から、近いうちに建物の躯体に係る大規模な改修や修繕が必要との報告は受けておりません。

 

〇内部のインフラが相当に老朽化している
他方、建物内部のインフラの老朽化はかなり進んでいるようです。前段で引用した答弁は以下のように続きます。

“しかしながら、経年劣化に伴う設備の更新に係るコストは年々増加しており、建物全体の維持管理コストの増加要因となっていると聞いております。”

この点については、中野サンプラザで働く方からも同様の状況を伺っています。独特の魅力があると評価されている音響設備などは、更新しようにももう製品が生産されていないといったものもあるそうです。普通、建物が二百年使える造りになっているのであれば、内部のインフラもそれを前提に維持管理や修繕がされてしかるべきですが、中野サンプラザは中野区が取得した時点で「再開発ありき」であったため、十分な管理がされてこなかったのだと思われます。

 

〇新区役所の財源問題
こうした建物の物理的な状況とは別に、中野サンプラザを残すには財政的な課題もあります。中野区は区役所・サンプラザ地区の土地を最大限活用して新区役所建設の財源を生み出すとしています。平成28年12 月に示された「新しい区役所整備基本計画」によると、新区役所の整備に必要な費用は、現在のところ約221億円とされています。
区役所の移転条例は既に成立していますので、中野サンプラザを残すとなると、この221億円をどうやって調達するのかという問題が生じます。中野区の基金残高は平成28年度決算で約676億円なので、全額そこから支出することもできなくはありませんが、今後の社会保障費の増大や不況への備え、インフラの更新などの財源も必要なので、基金は「あるから使って大丈夫」という性質のものではありません。起債で賄うことも考えられますが、分母が大きい分利子の支払いだけでも相当の財政負担を生むことになります。中野サンプラザの一定期間存続を条件に現状のまま民間に売却ないし管理運営権を貸し付けるといったことも理屈の上では考えられるかもしれません。しかし、民間での管理運営が難しくなり区が100%出資をした企業が所有することとなった過去の経緯から考えると、あまり現実的な選択肢になるとは思えません。
さらには、当面は中野サンプラザを残すとしても、いつかは建て替えが必要となります。今から大規模修繕をしたとしてどれだけ寿命を伸ばせるか。修繕の費用はどう賄うのか。今の区の計画通り進めた場合と中野サンプラザを当面残した場合、トータルのライフサイクルコストにどれだけの差が生じるのか。現時点で確定的なことは何も言えません。

今、中野サンプラザはあくまで株式会社まちづくり中野21という「民間企業」の所有であるという立場から、中野区は中野サンプラザの現状を詳細には把握していませんし、把握しようとすらしていません。まちづくり中野21の株式は100%区が保有しているにも関わらず、です。そのため、例えば先に触れた「中野サンプラザは二百年使える造りになっている」ということも区としては認めていません。区長が変われば、こうした区の姿勢を改め中野サンプラザ存続の可能性を探ることはできるでしょう。しかし、その結果として中野サンプラザの存続を決めるには、特に財政面でかなり高いハードルがあります。例えば、仮に区長選挙の公約として「中野サンプラザ存続の可能性を追求する」と掲げた場合、中野サンプラザ存続を求める皆さんに期待だけ持たせることになるのではないかと懸念しますし、それであれば新施設をより良いものにする方向に労力をかけた方がいいのではないかとも思います。

私としても非常に悩ましいところです。皆さんはどのようにお考えになるでしょうか。

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