中野区議会議員の森たかゆきです。
11月29日の本会議にて一般質問を行いました。
その原稿全文を公開します(読み原稿なので実際の発言とは微妙に異なります)。
今回取り上げたテーマは以下の通りです。
1.施設使用料の改定について
2.子育て支援・教育について
(1)教育無償化に係る諸課題について
(2)子どもの安全を守る施策について
(3)その他(保育事業者の不正への対応について)
3.文化施策について
(1)中野サンプラザの文化的価値の活用について
(2)中野×杉並アニメフェス2017について
(3)旧中野刑務所正門について
(4)その他(哲学堂公園再生整備事業について)
区からの答弁とそれを受けての所感は、また後日掲載します。
以下、原稿全文です。
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平成29年第4回定例会本会議におきまして民進党議員団の立場から一般質問を行います。
施設使用料の改定について
まずは、1.施設使用料の改定について伺います。今回の施設使用料の改定では、スポーツ施設について改定後6年間、算出した使用料の半額とするお考えとのことです。区有スポーツ施設が安価で使えるようになること自体は悪い話ではありませんが、単にオリンピックがありその前後のタイミングで半額にすれば区民の健康づくりにつながるだろうというだけでは余りに安直です。そこで、いくつか確認をさせていただきます。
一点目は、今回の措置とこれまでの考え方との関係についてです。施設使用料の算定に当たって、区はこれまで受益者負担という点を重視してきたように思います。時に「中野区は使用料が高い」というご意見をいただきながらも、利用される方にその分より多くご負担いただこうという姿勢を貫いてきました。私としては、その点は評価すべきことと考えてきたのですが、そうしたこれまでの考え方と今回の軽減策との整合性をどのようにお考えでしょうか。伺います。
今回の改定では、スポーツ施設は負担割合7割、集会室は5割という現在の性質別負担割合は変更せずに、計算結果を半額にするとのことです。性質別負担割合の説明として、区は「個人による選択性が高く利用者の便益に資する施設のコストは、利用者が全額負担することが原則。ただし、政策的な観点から区が整備した施設については、一定割合を公費で負担する。」としています。そうすると、スポーツ施設は集会室よりも個人の選択性が高いという考え方は残ることになるのではないでしょうか。スポーツ振興・健康づくり推進といった政策的観点からスポーツ施設の使用料を半額とするのであれば、性質別負担割合を変える方法を採ることが筋と考えますが、なぜ計算結果を半額とする方法を採るのでしょうか。説明を求めます。
財政面に関係して伺います。今回の措置で年間9000万円程度の区の負担が生じると伺っています。単純計算ですが、6年で5億4千万円になります。この分の財源はどのように賄うのでしょうか。伺います。
期間を6年としている点に関連して伺います。6年というと、仮に万が一区長がもう一期務められたとしても、さらにその後の話になります。6年後に継続実施の可否を検討するとのことですが、一度大きく下げた使用料を再度上げるのは至難の技であると考えます。大きな政治的課題を将来に残すことにならないかと懸念します。区長としてその責任をどのようにお考えでしょうか。
施策効果の検証は当然必要です。しかし、この施策がなくてもオリンピック・パラリンピックが近づけばスポーツ機運は一定高まるものと思われます。他方、高齢化の進行状況を考えると、医療費の上昇傾向は続くでしょう。
施策単独での効果検証は難しいように思われますが、検証方法やその内容についてどのようなことを考えているのでしょうか。また、実施3年後、中間のタイミングなどでの検証も必要と考えますが、その点はいかがでしょうか。合わせてお答えください。
スポーツ機運醸成・健康づくり推進という点で成果を上げるためには、単に今利用されている方々が安く使えるようになるだけでは不十分です。これまで施設を利用していなかった、スポーツをあまりしてこなかった人たちの利用を促すような施策も併せて実施する必要があると考えますが、区としてそうした戦略は考えているのでしょうか。伺います。
そうした戦略が必要な一方で、スポーツ施設は区有施設の中でも人気のある施設であり既に多くの区民が利用されています。これまで利用率の数字は伺ったことはありませんが、例えば決算特別委員会に提出いただいている資料で利用人数を見ると、中野体育館運動施設は年間30万人近く、上高田運動施設が9万3千人以上、哲学堂運動施設が12万6千人以上といった状況とのことです。これ以上利用者数を伸ばすといっても、現在の利用状況と各施設のキャパシティから考えて、その余地は大きくないのではないかと思われます。この点について、主な施設の利用率の数値と合わせて見解を伺います。
今回の軽減策は、東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機とした機運醸成の取り組みの一環という位置づけもされています。しかし、オリンピック憲章は幅広い内容を含んでおり、私自身は、スポーツに留まらずその幅広い理念を日本社会により深く定着させていくことこそが成熟都市・東京でオリンピック・パラリンピックを開催することの意義だと理解しています。オリンピック憲章には、文化・芸術振興の重要性も謳われており、開催国には複数の「文化プログラム」の実施が義務付けられています。オリンピック・パラリンピックの開催を一つの契機とするのであれば、オリンピック憲章の理念を尊重し文化施設についても何らかの軽減策を今後検討すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
最後に、施設使用料の算出方法全体について一点伺います。今回の改定では、算定の基本方針及び算定基準の考え方には変更がありませんでした。しかし、現在の考え方では、例えば施設が古くなると、使用料は高くなるといった現象も生じており、何らかの考え方の変更が必要ではないかと考えます。今後の検討の方向性についてのお考えを伺います。
2. 子育て支援・教育について
(1)教育無償化に係る諸課題について
続いて、2.子育て支援・教育について(1)教育無償化に係る諸課題について伺います。将来の消費税増税分を主な財源とする教育無償化をめぐる議論が国会でなされています。教育への公的支出割合がOECD諸国中最低レベルという状況の改善、親がどういった状況にあろうと子は子として等しく受益者とするといった普遍主義的理念の具体化に近づくのであれば歓迎したいと思います。他方、政府は財政健全化の旗は降ろさないとする一方で、具体的な歳出削減策には乏しい状況です。
私自身は、子育て、教育への財源投入は未来への投資であるとの立場から、この点をもって教育無償化を必ずしも否定しようとは考えませんが、プライマリーバランス黒字化の目標はどうなるのか、気にかかることは確かです。議論の対象は保育や幼児教育から高等教育までと幅広く、具体的な制度設計はこれからという状況ですが、教育無償化をめぐる議論について、現時点で区長はどのように見られているか、伺います。
特に、こうした行政サービス拡充が行われる際の常ですが、中野区のような不交付団体にとっては国の施策であっても今後一般財源からの負担が求められる部分がでてくるのではないかと想定されますが、その点はどのようにお考えでしょうか。合わせてお答えください。
先ほど、普遍主義的理念の具体化であれば望ましいと述べましたが、実際には様々な観点からの線引きがされる可能性は否定されていません。保育の分野では、認可外施設を含めるのか否かという点が議論の対象になりました。現在は含める方向で検討されているようですが、今言われている金額は中野区内の認可外施設の保育料から考えると無償化には程遠いものです。本当に認可外も無償化の対象にすべきか否かという点も本来は重要な論点ですが、認可外施設を無償化の対象から外してしまうと、認可園に入れなかった方は無償化の恩恵も受けられないという二重の不利益を被ることになってしまいます。
無償化は、無料で利用できるなら保育園を利用したいというニーズを掘り起こすことにもなるでしょう。いわゆる「保活」の更なる激化が懸念されます。中野区では、保育料の算定にあたっては、所得階層を細かく分けて保育料を決定しており低所得者層に対する配慮も既に相当程度行っています。これらの点を踏まえて伺います。
今でさえ急増する保育需要に対して施設整備が追い付いていない中、無償化による更なるニーズ掘り起こしに区として対応できるとお考えでしょうか。また、保育については無償化よりも待機児童解消の実現が先行すべきと考えますが、いかがでしょうか。
(2)子どもの安全を守る施策について
続いて、(2)子どもの安全を守る施策について伺います。この項では2点伺います。
まずはいじめ対策についてです。本年第3回定例会決算特別委員会総括質疑にて、わが会派の酒井議員から生徒が匿名でいじめを通報できるいじめ報告相談スマートフォンアプリSTOPitの導入を行った柏市教育委員会の事例を紹介し、同様の取り組みを行うよう求めました。他にも、長野県教育委員会が導入したLINEを活用したいじめ相談事業の例などもありますが、これらの先行事例を見ると、いずれも前年度の電話相談の件数を年度途中で大幅に上回る相談を受け付けています。チャットツールやSNSを用いた相談事業に、これまでの相談事業では拾えなかった声を拾える効果があるのは明らかです。文部科学省もこの効果に着目し、「SNSを活用したいじめ等に関する相談体制の構築に係るワーキンググループ」を立ち上げ、将来の全国展開を見据えたモデル事業を来年度実施予定とのことです。
中野区としてもできる限り早くこうした相談事業を開始していただきたく、来年度予算での対応を求めます。いかがでしょうか。
もう一点は、子育て中の危険に関する注意喚起について伺います。私事で恐縮ですが先日子どもが3歳になりました。嬉しいことも大変なこともありますが、日ごろ感じるのは、子育ては常に危険と隣り合わせだということです。子どもの事故は重大な結果を招いてしまう場合もあり、予防対策は非常に重要です。
予防対策としてまず思い浮かぶのは、「机の角に頭をぶつけないようにしているか」とか「子どもの手の届く範囲に危ないものを置いていないか」などいった一般的な注意事項をまとめて周知するもので、中野区では子育て支援ハンドブック『おひるね』の「子どもの事故の予防」というページなどにまとめて掲載されています。
こうしたまとまった注意喚起とは別に、何らかの事件や事故が起きてしまった後に同様の事象を防ぐために行われる注意喚起もあります。今年の例でいえば、都内で0歳児にはちみつを与えたことによる死亡事故が発生してしまったことを受け、中野区保健所が「1 歳未満の乳児にはちみつを与えないでください」という注意喚起の文章を発表しました。数年前に抱っこひも利用時の事故が問題となった際には、東京都が「抱っこひもからの転落事故に気を付けて!」という啓発リーフレットを作りました。
このような形で、すでに様々周知・PRに務めていただいているところではありますが、そうした情報が実際にどれだけ当事者の皆さんに届いているでしょうか。また、何かが起こった後に緊急的な形で発せられる注意喚起の内容は、その後も継続して伝わるようになっているでしょうか。個別の事象であってもそこから一般的な教訓を得られるケースも多く、少し時間が経ったら注意事項が伝わらなくなってしまうのでは問題です。
情報発信の方法についてもタイミングやツールなど、もう一工夫をしていただきたいと思います。最近は区のtwitterやFacebook活用も定着して来ました。こうした親世代に届きやすいツールを活用すること、また、例えば親子が一緒にいる時間が長くなる長期休暇の前の時期を狙うなどタイミングを考え、よりインパクトのある啓発活動を行なって頂きたいと考えます。子どもの事故予防について、区としてどのように認識し対応されているのでしょうか。伺います。
(3)その他
(3)のその他で一件伺います。大変残念なことですが、保育園の運営事業者による不正がしばしば起こっています。先週も、中野区内でも保育施設を運営する事業者が不正を行い東京都から改善指導を受けたとの報道がありました。様々確認したいこと、考えるべきことはありますが、今回は一点だけうかがいます。保育園は施設の性質上、不安や不信があってもその施設を利用し続けるしか選択肢がないという保護者の方がほとんどです。臨時監査など保護者の不安を払拭するための対応が必要だと考えますが、いかがでしょうか。
3. 文化施策について
続いて3.文化施策について伺います。私は先日、サブカルチャーを中心に自治体の文化施策を考える超党派のオタク議員集団「ニュージェネレーション」としてマニフェスト大賞に応募し、応募総数 2,597件から選ばれた108件に与えられる「ノミネート認定」をいただきました。残念ながら大賞受賞とはなりませんでしたが、この活動の中で他地域の議員の活動から様々な示唆をいただきました。その成果を区政に還元したく、質問いたします。
(1)中野サンプラザの文化的価値の活用について
まずは、(1)中野サンプラザの文化的価値の活用について伺います。中野サンプラザは、これまで中野区民はもちろんですが、それに留まらず多くの人々に愛されてきました。その中にはいわゆる文化人、アーティストといった人たちも含まれます。特に音楽の世界では、中野サンプラザは日本武道館などを目指すアーティストにとって一つの登竜門のような位置づけがされていると聞きます。サンプラザを「聖地」と呼んで頻繁にコンサートを開催するアイドルグループもあります。先日は、ある大物声優さんがデビューから30年以上経って初めて行ったコンサートの会場に中野サンプラザを選び、そのチケットはプラチナ化しておりました。公演では中野ブロードウェイも映像で登場し、いわゆるサブカルチャーとの相性の良さも改めて感じさせました。特別な想いをもって中野サンプラザの舞台に立った文化人、アーティストも多く、またその想いは観客としてサンプラザを訪れた多くのファンとも共有されてきました。開業から45年、この間に音楽史・芸能史・サブカルチャー史の中で中野サンプラザが果たしてきた役割は決して小さくないのではないかと考えます。
区役所・サンプラザ地区再整備事業の議論が進んでいます。その内容の是非はともかく、中野サンプラザが解体されるということであれば、単に中野サンプラザの名前を新施設に引き継ぐか引き継がないかという話だけではなく、これまで中野サンプラザが果たしてきた文化的役割をなにがしかの形でまとめ、歴史として残しておく必要があるのではないでしょうか。例えばこれは一つのアイディアですが、中野サンプラザを活用してきた文化人・アーティストにサンプラザへの想いを語っていただき、それと公演の様子などを合わせて冊子や動画集としてまとめるなどの形を取れば、文化の保存に留まらず、ふるさと納税の返礼品として活用するといったことも考えられます。この点についての区の見解を求めます。
(2)中野×杉並アニメフェス2017について
次に(2)中野×杉並アニメフェス2017について伺います。本年第一回定例会の一般質問ではこの事業の予算について取り上げましたが、まず実施しての結果はどういったものであったのか伺います。
今年はアニメ100年という節目の年であり、東京都の補助金も活用しての事業でしたが、来年度以降の展開はどのようにお考えでしょうか。近隣には杉並区の他にも、「銀河鉄道999」のイラスト入り住民票を発行する練馬区、トキワ荘や乙女ロードのある豊島区、ジブリ美術館の三鷹市、タツノコプロなどとコラボイベントを実施し、また、アニメ漫画文化に理解の深い松下玲子新市長の誕生した武蔵野市などもあります。継続していくのであればこうした自治体との連携も考えられますが、その点はどうお考えでしょうか。合わせてお答えください。
オタク議員の私としては、行政がアニメや漫画といった分野に理解があることは大変喜ばしいことだと思っていますが、一方で行政はイベント会社ではありません。単なる集客事業を行政が継続的に主催するのであれば、それには賛同しかねます。行政が関わることで様々なアクターをつなぐ役割を担えるという利点はあるでしょう。こうした事業を継続していくのであれば、そうしたつなぎの役割を果たしつつ将来的には民間主導のイベントとして実施されるようなところを目指していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
(3)旧中野刑務所正門について
続いて(3)旧中野刑務所正門について伺います。法務省矯正研修所東京支所跡地にある旧中野刑務所正門については、その建築文化的・歴史的価値から、これまで多くの同僚議員から保存・活用を求める議論がされてきました。旧中野刑務所には治安維持法によって思想弾圧を受けた思想家らが収監されていました。この門が背負っている歴史は決して明るいものではありません。しかし、そうした歴史を次世代へ引き継いでいく、語り継いでいくことも今を生きる我々に課された使命なのではないかと考えます。わが会派としてもこの門を保存し、また今後学校施設の中で活用することを検討していっていただきたいと考えています。矯正研修所跡地は、これから法務省から財務省へ移管されるところであると聞いています。この移管のタイミングで解体されることのないよう、国に求めるべきと考えますがいかがでしょうか。
(4)その他
最後にその他で哲学堂公園再生整備事業について伺います。先日、哲学堂公園再生整備基本計画案の議会報告がありました。計画の実施には15億から20億円規模の費用がかかるとの事です。文化財の修復・復元に一定の費用をかけることは必要であると考えますが、当該計画案はそれに留まらない幅広い内容を含んでいます。その中でも、現在の児童遊園のスペースに学習展示施設や駐車場の設置が予定されている点をみると、自由に利用できているスペースが縮小されるのではないかと懸念します。観光拠点としての期待も語られていますが、その可能性はどれほどあるのでしょうか。率直に言って、当該計画案の合理性・費用対効果を理解しかねます。この点について、区はどのように説明しますか。
4. その他はございませんので、この点を伺い私のすべての質問を終わります。
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