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過去最大規模になった酒井区長初の予算案は「放漫財政」か~中野区平成31年度(2019年度)予算案の概要

中野区議会議員の森たかゆきです。

今週、中野区の来年度予算案の概要が公表されました。

資料や記者会見動画は下記リンクからご覧いただけます。

2019年2月7日 区長記者会見 平成31(2019)年度当初予算案の概要を発表しました

本エントリは来年度予算案の「概要編」ということで、予算の位置づけや大枠について、特に過去最大規模の予算となった要因について、私なりに整理したいと思います。

1本予算案の位置づけ

(1)予算編成の目的

来年度予算案は、いうまでもなく昨年6月に就任された酒井直人区長初の予算案です。その予算編成の目的については、「当初予算(案)の概要」の冒頭に下記のように記されています。

平成31年度予算は、新しい基本構想・基本計画の策定に向けた議論を注視しながら、これまでの計画に沿って進めてきたまちづくりや施設の整備等についても、改めて将来に向けた十分な検証に立ち返り、必要に応じて区民との対話等を行いつつ着実に推進するほか、政策課題については、的確に対応することを目的として編成を行いました。

 

皆さん、この文章を読んで意味が分かるでしょうか。正直、私はよく分かりません。これまでの区政を継続するようにも読めますし、そうでないようにも読めます。新しいことをやろうと言っているようにも読めるし、そうでないようにも読めます。

区長が変わったとはいえ、自民党と公明党で中野区議会の過半数を占めている状況は変わっていません。この間、区政の政策転換を進めるにあたってはそのことによる困難が様々ありましたが、そうしたこれまでの困難さを象徴した文章になっているなぁというのが率直な印象です。わかりづらいのは、各方面に配慮した結果でしょう。担当職員さんの苦労がしのばれます…

(2)子育て先進区・ファーストステップ

「中野を子育て先進区へ」と掲げた酒井区長らしく、重点項目の一番目に「子育て先進区に向けた取り組み」が位置付けられています。記者会見用の資料には、子育て先進区への「ファーストステップ」という表現もあります。詳しくは後日書く「個別事業編」で触れたいと思いますが、「新規・拡充・推進」に示されている事業数は子ども教育費分が最も多くなっています。

2過去最大規模の予算案

(1)最大規模の予算案を支える財源

平成31年度(2019年度)予算は一般会計が1521億円超で、過去最大規模であった今年度当初予算の1428億円を上回り、2年連続で過去最大規模の予算となっています。歳入をみてみると、特別区債の発行額が102億円超と、今年度の33億円超を大きく上回っています。特別区税や特別区交付金等も多少伸びていますが、起債の影響が圧倒的です。

(2)過去最大規模の予算案は「放漫財政」か

私たち立憲民主党を含めた「国政野党」系の支援で当選した酒井区長に対しては、「放漫財政になるのではないか」という懸念が示されていました。選挙の際に区民の方からそうしたことを聞かれたことも一度や二度ではありませんし、当選後には議会でもそうした議論がされました。そして、最初の予算編成で過去最大規模の予算となり、しかもその財源のメインは区債の発行(ごく単純化して言えば「借金」)です。「やはり放漫財政ではないか」という批判の声が聞こえてきそうです。しかし、ことはそう単純ではありません。問題は、増やした財源を何に使うのかです。起債を活用して行う事業は主に以下の3つです。

・区立学校再編整備          約84.5億円(今年度約30.4億円)

・(仮称)中野区立総合体育館整備     約50億円  (今年度約23億円)

・哲学堂公園野球場改修                  約14.7億円(今年度約2000万円)

 

要するに、来年度予算案が過去最大規模になっている主な要因は、前区政の下で進められていた施策で区長が変わったからといって止めるわけにはいかない大規模施設整備に関わる事業が集中したことにあります。財源が区債発行となっているのも、世代間負担の公平性担保のために施設整備には起債を活用するという自治体の標準的な財政運営の考え方に沿ったものです(個人的にはこの考え方には疑問もあるのですが、それはまた別の機会に…)。逆に言うと、子育て先進区実現の「ファーストステップ」として予算付けした事業が様々あっても、その影響は限定的ということでもあります。

そのことをどう評価するかは難しいところです。中野区政は超緊縮財政路線を走ってきた前区政が16年続いてきました。費用対効果を見るというよりは、お金を使うことそのものが悪であるかのような風潮は何となく今でも残っているように感じます。今後、特に学校の建て替え費用が財政的に大きな負担となることが見えている中で、当然一定の財政規律は必要です。他方で、まさに今困りごとを抱えている区民に手を差し伸べる事業、未来への投資である子育て・教育に関する事業などにお金をかけること自体は決して悪ではありません。しかし、区長が変わっても、区役所内の雰囲気は未だに後者の観点が弱いように感じます。

酒井区長は、「基準となる一般財源規模を定める」という中野区独自の考え方を含めたこれまでの財政運営の考え方を当面は踏襲するとしています。しかし、今後の新たな基本構想・基本計画策定の議論の中で、財政運営の考え方についても改めて議論を深めていかなければならないと考えています。

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