2月17日から中野区議会第一回定例会が始まりました。初日には区長の施政方針説明があり、その後の3日間で20名の議員が一般質問を行いました。私は民主党議員団幹事長として登壇しましたので、何度かに分けて質疑の概要をお伝えします。
今回は、区長の施政方針説明にあった「具体的な出生率の目標を立て、「育てやすい」から「生みたくなる」への取り組みの強化を図る」という発言についてです。
出生率の数値目標設定は私が以前に提案したものでもあり、その実現は歓迎したいと思います。戦前のような「産めよ増やせよ」になってはなりませんが、思い切った予算付けを含んだ子育て支援施策を実現するためには、その前に明確な目標設定をしないと難しいと実感して提案したものでした。
一方、後段の「育てやすいから生みたくなるへ」という発言には、強い違和感があります。
詳細は省略しますが、既婚者で言えば「理想の子どもの数」と「実際に産んだ子どもの数」にギャップがあり、そこには経済的な要因があります。少子化の主要因とされる未婚化・晩婚化についても、例えば非正規雇用男性の配偶者のいる割合は正社員の半分に満たないなど、こちらも経済的な要因が大きいと考えられます。いずれも、生みたくないから生まないのではありません。行政は、「生みたくなる」と個人の内面の動機に介入しようとするのではなく、「生みたいと思った時に生める」環境整備に注力すべきです。
「平成27年度待機児童ゼロ」の目標も達成できなかったことを考えると、そもそも今の中野区で「育てやすい」が実現しているとも思えません。そうした中で「「育てやすい」から「生みたくなる」への取り組みの強化を図る」といって、具体的に何をしようというのか。その真意を質しました。
・・・が、なんと答弁に立ったのは区長ではなく子ども教育部長でした。
他の部分は別に部長答弁でも構わないのですが、政治家たる区長がキーフレーズ的に使った言葉については、役人任せではなくご自身の言葉で説明していただきたかったので、大変残念に思います。
答弁の内容としては、「昨年決定した「中野区子ども・子育て支援事業計画」に沿って子育て支援に取り組んでいく」といったものでした。この答弁では「これまでの流れを踏襲する」といった姿勢に見え、結局「「育てやすい」から「生みたくなる」への取り組みの強化を図る」という言葉で区長が何を言いたかったのかは判然としませんでした。
いずれにしても、出生率の向上に向けた取り組みに必要なことは、子育てに関わる負担を広く社会化していくことに尽きるのではないかと思います。国においては、先進国最低レベルにある子育て・教育に係る費用の公的支出割合の増加が必要です。自治体においては、妊娠出産期の不安に対応した相談体制の確立、地域での乳幼児親子の居場所の整備、質の高い幼児教育の機会の保証、保育園や学童クラブの待機児童解消など、要するに施策の方向性としては、これまで区が進めたきた施策を着実に前に進め、子育てや教育に関わる負担や不安を一つ一つ取り除いていくことこそが求められているのだと考えます。
国の動きを見ても、現政権になってから、女性手帳や3年抱っこし放題に始まり最近の三世代同居支援に至るまで、総理自身の保守的な家族観と新しい発想をしようという工夫によって、施策の効果・合理性が犠牲になっているのではないかという気がしてなりません。中野区においては、「生みたくなる」を目指して何か特別に目新しいことをやろうとするのではなく、効率性とスピード感をより意識した上で、スタンダードな対策を進めるよう引き続き議論していきます。
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