立憲民主党　中野区議会議員の森たかゆきです。

先日の予算特別委員会での質疑準備の一環で国の政策の影響による歳入減・歳出増要因をまとめていたら、かなり恐ろしいことになっていたので区民の皆さんと共有したいと思います。

歳入減

1．ふるさと納税　影響額：12億円

ニュース等でも話題になっているふるさと納税ですが、ここ数年でどんどんと影響額が膨らみ、遂に10億円を超えました。昨年度比でも約1.4倍になっています。中野区も一応ふるさと納税事業に取り組んでいますが、収入見込みが3000万円に対して事業経費が1500万円かかっています。差し引きで見ると、ほぼ全額が流出という状況です。

2．法人住民税の一部国税化　影響額：21億円

いわゆる「東京一極集中の是正」の一環で、地方税である法人住民税を一部国税化することにより都市部の財源を地方にまわそうとする政策の影響額です。この金額は来年度の影響額であり、消費税増税時にはここからさらに13億円の減収拡大が見込まれています。

3．地方消費税清算基準の見直し　影響額：11億円

地方消費税の配分の計算方法を変えたことで、こちらも都市部から地方へ財源が流出します。消費税増税時にはここからさらに4億円の減収拡大が見込まれています。

歳出増

4．区の支払う消費税の増税分　影響額：2億円

平成31年10月から半年分の影響額です。消費税増税分の歳入が区に入ってくるのは2020年度以降になるので、来年度予算については単純に支出のみが増えます。なお、５％から８％への増税が行われた際には、区の歳入増と歳出増はおおむね同額でした。消費税増税分の歳入がそのまま歳出として出ていってしまうような状況です。８％から１０％になっても同様のことになると見込まれます。

5．幼児教育・保育無償化　影響額：2億円

こちらも平成31年10月から半年分の影響額です。半年で2億円ですから、再来年度以降は4億円の影響額になります。一応、来年度分については国が負担すると言われていますが、まだ詳細は未定とのことです。

 

これらの影響額を単純に合計すると、約48億円にも上ります。幼児教育・保育無償化の費用が全額国の負担となったとしても約46億円です。これがどのくらいの金額かというと、「学校を一校建てておつりがくるくらい」です。

中野区の財政はここ数年の好決算の影響で多少余裕があるように見えますが、今後もそうした状況が続くとは限りません。むしろ今後の経済動向には、既に危うい兆候も見られています。また、中野区はこれから学校建替えのピークを迎えます。私が議員になった頃学校一校当たり約30億円と言われていた建設費用は、設計労務単価や建築資材費の上昇により今では40億円程度かかると言われています。この経費が区財政全体に影響を及ぼし、平成31年度当初予算案の概要には2023年度の起債残高が791億円と過去最高になる見込みが示されました。

こうした財政的な面も踏まえて、私は中野区教育委員会の進める学校再編計画（第2次）に大筋では理解を示し、区民の皆さんにもご理解とご協力を求めてきました。学校を一校でも多く残せるならば残したいという想いもありながらの判断でした。そんな中で、国の政策の影響によって1年毎に学校一校建てられる規模の金額が流出をしてしまうと考えると、なんとも言い難い無力感に襲われます。

地方全体で財政不足に陥っている現状を変えるためには、本来であればまずは国から地方への税源移譲を行うなどの方法で地方税財源の拡充を進めることが重要であり、これらの政策のような水平的調整では問題の根本解決にはなりません。また、学校建替えの他にも保育施設の整備など大都市には大都市特有の行政需要があり、そうした事業にかかる経費も年々増加しています。残念ながら国はこうした事情をよく理解しておらず、経済財政諮問会議においては民間議員から「地方では使い切れない財源が積み上がっているのではないか」という驚くべき発言まで飛び出しています。（議事要旨はこちら）

しかし、これが今のこの国の「地方自治」の現実です。その現実に向き合いながら、自治体の実情を国に理解してもらうための活動を続けていきます。

（なお、正確には区の歳入が減った分は都区財政調整制度の中で調整がされるため、この全額が区の減収となるわけではありません。ただし、国のこれらの政策は都区財政調整制度の財源そのものを縮小させるものであり、また算定方法も非常に複雑であるため、都区財政調整制度の調整結果も含めた具体的な影響額を出すのは難しい制度になっています。いずれにしても、これらの国の政策の区財政への影響が非常に大きいという点は変わりません。）