中野区議会議員の森たかゆきです。12月14日に閉会した中野区議会第4回定例会最終日に、23区初となる「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」が可決しました。私は賛成討論を行い、その中で戸籍上は妻の姓にしていることを公表しました。この問題に対する私の想いは改めて綴りたいと思いますが、まずは意見書本文と、討論全文を掲載します。
選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書
1996年2月26日、法務大臣の諮問機関である法制審議会が選択的夫婦
別姓制度の導入を含む民法改正案を答申してから22年が経過しました。最高
裁判所は2015年12月16日、「夫婦同姓規定には合理性があり合憲」とす
る初判断を示した上で、その後の検討を国会に委ねましたが、議論が進まない
まま今日に至ります。
内閣府は2018年2月13日、「家族の法制に関する世論調査」で夫婦別姓
制度導入の賛成が42.5%に達し、反対の29.3%を上回るという結果を公表
しました。このような社会の気運を鑑み、国において制度導入に向けた議論が
進められるべきです。
改姓によりそれまで築き上げてきたキャリアに分断が生じる人や、姓の折り
合いがつけられず結婚そのものを諦める人など、社会的な不利益・不都合をこ
うむる人が一定数いることは事実です。多様化する社会において、適切な法的
選択肢を用意することは、国の責務であると考えます。
よって中野区議会は、国会及び政府に対し、選択的夫婦別姓制度を法制化す
ることを求めます。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき、意見書を提出します。
年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣 あて
総務大臣
法務大臣
中野区議会議長名
森たかゆき賛成討論
議員提出議案第22号「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」について、賛成の立場から討論を行います。当議案は、第9号陳情「選択的夫婦別氏(夫婦別姓)制度の法制化を求める意見書の提出に関する陳情」が総務委員会で可決されたことに伴い提出されたものです。
選択的夫婦別姓の実現に際して問題となるのは、民法750条の規定です。最高裁は、夫と妻どちらの姓を選んでもよく形式的な不平等が存在するわけではない等の理由で合憲と判断したようですが、現実には約96%の夫婦が夫の姓にしています。同姓強制が実質的な性差別を生んでおり、ここに第一の問題があります。
さて、公の場では初めて申し上げますが、私は婚姻時に妻の姓に改姓しています。私自身は、戸籍上の姓は単に書類上のものであって、自分の本名は改姓前の森隆之のままだと認識しています。要するに役所に提出する紙なんてその程度のものだとしか思っていないのですが、それでも婚姻時に別姓を選択することができたなら、きっとそうしていただろうと思います。こうした事情から、この問題については、自分も当事者であると感じています。
世の中には、役所に提出する書類は単なる紙だと割り切る方ばかりではありません。改姓により「名前を奪われた」と感じる方、夫の姓で呼ばれることに慣れることができず、それを合法的な「人格の抹殺」だと感じる方もいらっしゃいます。割合としては少数派なのかもしれませんが、当事者にとっては個人の尊厳・アイデンティティに深く関わる問題です。今回、陳情提出者の方々から様々なお話を聞くにつれ、そのことを強く認識しました。
改姓により発生する問題には、キャリアの分断が生じる、各種控除が受けられない、病院で家族と認められず入院や手術の手続きに支障をきたす等、生活上の困難も多数あります。私自身も、日常生活の様々な場面でどちらの姓を使えばいいのか戸惑うことがあります。事実婚や通称利用の拡大だけでは解決できない問題も多く、そのことに対する司法の理解が不足していることが明らかになった今こそまさに立法による解決が求められています。
区民が直面している問題を国に伝え、その解決のために法改正を促すことは、私たち区議会の大切な役割の一つです。
なお、意見書では、内閣府の世論調査の結果、賛成が反対を上回っていることに触れています。社会の理解が進んでいる状況を示す数字という意味では重要ですが、本件は基本的人権にかかわる問題でもあります。多数による決定と個人及び少数者の権利擁護、この二つの原理の両立は近代民主制の基盤です。例え多数の理解が十分でなくても少数派の権利保障のための判断を政治がすべき場合もあることは指摘しておきます。
選択的夫婦別姓制度の問題は、より抽象的には、国家が家族のありようにどれだけ口を出すのかという問題です。当意見書の提出が、国家の干渉は最小限に多様な家族の在り方が受け入れられる日本社会の実現の一助となることを願いまして、賛成の討論といたします。
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