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【区政の論点】区立保育園を「今」民営化することの課題

中野区議会議員の森たかゆきです。

昨日のエントリでは、区立幼稚園・区立保育園を存続することの意義について書きました。今回は、その続編として区立保育園を「今」民営化することの課題について考えたいと思います。

先日、twitterで下記のまとめが話題になっていました。

悲痛な母の声!急速な区立保育園民営化に巻き込まれたリアルな現状

元ツイートは、今年度から民営化(正確には今年度は仮園舎に移っての民間委託化で、最終的な「民設民営化」は来年度)された園を利用されている方のものであると思われます。

私も、上記のまとめ以外にも、今年度委託化された園で様々な問題が起きているという話を聞いています。まとめとは別の視点では、特に要支援児童のサポートに関する部分で不安の声が多く寄せられているところです。「保育の基本が抜けている」とおっしゃる方もいました。

なぜこうした事態になってしまっているのか。現場の状況を把握し早急な改善が必要です。一般的に、行政に問題を認めさせることはそれ自体が一つのハードルになるのですが、今回の件については行政も問題意識を持っていて一定の対応は行われているところです。現在の対応も含め今回の民営化のプロセスについては、次の定例会で取り上げたいと思います。

その上で、今回の件を次にどう活かしていくかも考えなくてはなりません。実は、区から委託を受けて今年度からこの園を運営している事業者は、もう何十年も区内で保育園を運営されている実績のあるところです。そうした経験豊富な事業者でもこのような事態になってしまうということは、一般に公立園の民営化に伴って発生する課題とは別に、この時期に民営化することによって発生する課題があると考えるべきではないかと感じます。

気にかかるのは、深刻な保育士不足の影響です。今回の民営化に際しては、保護者からの要望を受けて事業者募集の際に「経験年数〇年以上の保育士を〇名」といった条件付けもしていたのですが、その条件が満たされぬままの開園となってしまいました。今のままでいくと、少なくともあと数年は保育士不足は続くでしょう。また同じような問題が起きることは容易に想像できます。

保育士不足は、区政にとってはいわば外的な要因です。独自の待遇改善策などで一定の対応はできたとしても区政だけで根本的な解決をするのは難しい問題です。今回の事態を招いた原因が保育士不足にあるのだとすれば、場合によっては今動いている民営化スケジュールをいったん止めることも選択肢に入れるべきではないかと考えます。これまでは今の民営化スケジュールに乗っている園については進めるしかないかなと考えていましたが、今年度4月からの状況を聞いていると、それではいけないように思います。

保育士不足の影響以外にも検証すべき点があります。

例えば、今回の民営化が極めて急なスケジュールで進められたことの影響はどうだったのか。保育は、人と人のかかわりの中で行われるものです。いくら事業者そのものにノウハウがあったとしても、それを新任の先生方が学び理解し実践できるようになるには相応の時間がかかります。この点で改善の余地があるのではないか。

要支援児童のサポートに関する部分についても、「経験のある事業者だから」といって事業者任せにせず、中野区として求める支援の質を事業者が理解し実践できるようにするための研修など、もっと区が持っているノウハウを事業者に伝える仕組みが必要なのではないか。

それから、子どもの育ちの連続性という観点からは、中野区では学校再編も同時並行で進んでいることも考慮に入れなくてはいけません。地域によっては、保育園が民営化で仮園舎に移り新園舎に移り、卒園したと思ったら小学校も仮校舎で数年後に新校舎に移る…といった、非常に落ち着かない環境になってしまうことも起きます。老朽化した園舎・校舎が一斉に更新時期を迎えており建て替え自体は必要なのですが、特定の年代の子どもたちだけに大きなしわ寄せがいくことはできる限り避けるべきです。

このような観点から、今後の保育園の民営化の在り方については改めて考えなおしたいと思います。

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