森たかゆきのブログ

中野区議会議員(立憲民主党)森たかゆきの公式ブログです

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私が中野区長に「中野サンプラザ建て替え」を求めた理由

中野区議会議員の森たかゆきです。

9月11日から中野区議会第3回定例会が始まりました。
初日の一般質問では、私を含む複数の議員から中野駅新北口エリアの再開発についての質問がありました。そして、その質問への区長答弁で事実上中野サンプラザを建て替える旨の発言があり、その日のうちに(早いところでは当日の本会議が終わる前に!)、「中野サンプラザ解体へ」と報じられました。

私の質問も、実質的には区長に中野サンプラザの建て替えを促す内容でした。本エントリでは、私が今回の一般質問で区長に「中野サンプラザ建て直し」を求めた理由についてご説明したいと思います。

まずは、当日の私の質問と区長答弁をご紹介します。(答弁は当日聞き取ったものです。正式なものは区議会議事録をお待ちください。)

森質問
中野駅新北口駅前エリア再整備について伺います。このエリアの再整備、特に中野サンプラザの行く末については、区内外から非常に高い関心が集まっています。前定例会の我が会派中村幹事長の一般質問で、当該エリアの都市計画変更の手続きについては中野サンプラザ継続の是非が含まれる以上一旦見合わせるべきと求め、実際そのように対応をしていただきました。その後、区長は第2回定例会終了後から第3回定例会開会までの間、毎週何らかの形で区民との意見交換の機会を設けてきました。また、行政としてはHPでの意見募集もされていました。私もタウンミーティング等のいくつかに参加させていただきましたが、参加された区民の方からは様々な意見が聞かれました。もちろん、今の中野サンプラザを残してほしいという声もありましたが、新しい施設に対する具体的な要望なども聞かれ、私としては少なくとも中野サンプラザ解体反対が大勢という感じではなかったと理解していますが、区長は様々いただいたご意見をどのように受け止めておられるのか、伺います。

当該都市計画変更は中野駅西口改札の整備にも関わります。区長は西口最優先という方針も示しており、先日の関係委員会では一年程の工期短縮の見込みも報告されました。我々も西口改札の整備が遅れることはあってはならないと考えますが、仮に西口整備が遅れた場合の影響について区はどのように考えているのでしょうか。伺います。

9月7日に開催された区役所サンプラザ地区再整備推進区民会議に中野サンプラザの長寿命化工事を行う場合に必要となる経費の試算結果が示されました。今後15年間存続させるために約32.2億円が必要になるとのことです。この経費をどこからか調達し、さらにその後の施設更新経費も用意しなければならないと考えると、長寿命化のハードルは相当に高いと感じますが、区としてはこの試算をどのように受け止めておられるか伺います。

この試算はあくまでも施設の規模と年数などに基づいて標準的な手法で算出したものであって、現在の中野サンプラザの状況そのものを調査して出た数字ではありません。しかし、これまではそうした数字ですら区民に示されることはなかったわけで、区政の変化を感じるところであります。このように情報を積極的に公開し丁寧に説明する姿勢を継続すること、また、サンプラザ的なもとは何か、形か名前か規模か機能か、そうしたことについて議論を深め、後継施設の計画に活かしていくこと。これらを前提に、都市計画決定手続きについては、西口改札整備のスケジュールに遅れが出ないよう進めるべきではないかと考えます。いかがでしょうか。

 

 

区長答弁
・中野サンプラザの「施設そのものを残してほしい」という声もあったが、経緯や存続した際の課題、中野駅整備との関係などを説明し、「再整備するなら、機能や形状、名称などを残してほしい」との声が増えたと受け止めている。これまではこのような説明や議論が不足していたと感じる。可能な限り区民の皆さんと向き合う姿勢が必要。

・西口改札整備が遅れると、北口の混雑解消やバリアフリー化が遅れる。中野駅周辺各地区でまちづくりが進んでおり、区民・地権者・事業者などにも影響がある。できるだけ早期の西口改札開業を目指す。

・長寿命化工事に32億円かかるとの試算結果が出た。実際の経費とは異なるが一つの目安として判断材料になる。この他にも収益確保のための改修等も想定されるため、経営的には非常に厳しい。

・再整備する施設の検討は、駅前広場や道路など公共基盤にかかわる都市計画を定めて進めることが必要。当該都市計画は中野駅西側南北自由通路・橋上駅舎整備の与条件でもあり、中野駅西口改札早期開設のためにも都市計画手続きを進めていく考えである。

いかがでしょうか。おそらく、この問題に相当詳しい方以外は、これがなぜ「中野サンプラザ解体へ」となるのか疑問を感じることと思います。

ポイントは、質疑に出てくる「都市計画手続き」です。具体的には、下記の都市計画案が示されています。左側が現在の動線、右側が変更後の動線です。

変更後の、中野通りから西側に伸びている緑色の道路をご覧ください。現在中野サンプラザの建物が建っている場所に道路が通る計画になっています。また、中野駅西口改札を北側に出た広場の形状も定められています。

つまり、この都市計画手続きを行うということは、

・現在の中野サンプラザを解体し建て直す
・中野駅西口改札の整備を進める

ことの両方を意味します。

もちろん、この都市計画案は前区長の下で作られたものです。酒井区長になってはじめの課題は、西口改札整備を遅らせることなくこの都市計画変更案を変更出来ないか検討することでした。行政側は当初7月には都市計画変更に向けた手続きを開始したいと言っていたのですが、流石にそれは一旦止めてもらいました。(私の質問の「前定例会の我が会派中村幹事長の一般質問で~」は、そのことを指しています。)

しかし、西口改札整備を遅らせないためには早期に結論を出さないといけないことに変わりはありません。区長は区長で、私たち立憲民主議員団は議員団として、それぞれ検討を進めました。しかし、国土交通省、東京都、警察、JRやバス事業者をはじめとした交通や物流に関わる事業者など多くの主体が関わった協議の上に成立した都市計画案を変更するとなると、再度2~3年程の時間は必要になるだろうという点は動かせませんでした。

都市計画案の検討と同時に進めたのが、区民意見の把握です。区長は、第2回定例会から第3回定例会の間、毎週何らかの形で区民との意見交換の機会を設けてきました。私は私で、区長のタウンミーティングに出席したり様々な場面で出会う区民の方に中野サンプラザについての意見を聞いてみたりといった活動をしていました。
そうした中で、私は一万人アリーナ計画に対する拒否反応の強さを感じる一方、中野サンプラザ存続については意見が分かれるなという感触を得ました。質問で「中野サンプラザ解体反対が大勢という感じではなかったと理解している」と述べたのもそうした理由からです。

都市計画とは別に、財源の問題もあります。現在、中野区では区役所の建て替えに向けた作業を進めていますが、新区役所の建設費用は、区役所・サンプラザ地区を活用して賄うとされています。この点については、区長選挙前に書いたこちらの記事をお読みいただきたいのですが、それに加えて、9月7日の区役所・サンプラザ地区再整備推進区民会議で中野サンプラザの長寿命化のために必要となる改修費用の試算が示されました(当日の資料はこちら)。今後15年間存続させるために約32.2億円が必要になるとのことです。この経費をどこからか調達し、さらにその後の施設更新経費も用意しなければならないと考えると、長寿命化のハードルは相当に高いと言わざるを得ません。

普通に考えれば、この改修費用は、現在の中野サンプラザの所有会社である株式会社まちづくり中野21が調達するのが筋でしょう。しかし、今回示された年間の改修経費と近年の中野サンプラザの年間運営利益はほぼイコールです。そうすると、現在抱えている負債約44億円の返済は全く進まないことになります。このような状況で改修経費を市場で調達するのは相当難しいのではないかと思われます。
市場から調達できないとなると、もう一つの選択肢は区の資金を活用する方法です。区の政策的判断としてまちづくり中野21に資金を貸し付ける方法もあるにはありますが、この判断の是非は「中野サンプラザの公共性をどう考えるか」によります。
平成20年、中野区は様々な紆余曲折を経て中野サンプラザの所有会社の株式を100%取得しました。私が議員になる前の話ですが、私の所属会派の先輩方にあたる当時の民主党系会派はこの取得に反対をしています。「行政としてこうした分野に手を出すにはふさわしくない」「まさに民間に任せるべき分野ではないか」というのがその理由です。
私自身は、この議論は今でも有効であると考えています。中野サンプラザの所有会社の株式を100%区が所有しているということは、間接的に区有のホール、区有の結婚式場、区有のホテルetc…を抱えているということです。こうした形を今後も続けていくべきでしょうか。私は、やはり民間に任せるべき分野だと考えます。(中野区政と中野サンプラザの関係については、こちらに経緯がまとめられています。)

都市計画案の変更や財政的課題をクリアすることが難しいことは従前から分かっていたことではありました。だからこそ、酒井区長の公約は中野サンプラザの建て替えを前提とした「新サンプラザを新たな中野のランドマークへ」といった表現でしたし、それよりも中野駅の混雑解消・バリアフリー化(=西口設置)最優先としていた筈です。それでも、区長が選挙戦を通じて中野サンプラザや中野駅北口周辺再開発についての情報が区民に伝わっていないことを実感したことで、「中野サンプラザ存続の可能性も含めて検証する」という方針になったのだと理解しています。

個人的には、区民の声が「中野サンプラザ解体反対」一色という状況であれば、区長の公約に反し中野駅西口改札の開業を遅らせてでも、来年度予算に中野サンプラザの現状を調査する予算を計上し、より具体的な根拠をもって判断する選択肢もありだと考えていました。しかし、前述したとおりそこまでの状況ではないというのが私の理解ですし、何より現状調査をしても中野サンプラザの長寿命化が難しいであろうことは容易に想像がつきます。そうであれば、現在の中野駅の混雑状況の緩和やバリアフリー化を早期に進めるために、都市計画決定手続きは遅滞なく進めるべきと判断したところです。

少し長くなりましたが、以上が「私が中野区長に「中野サンプラザ建て直し」を求めた理由」です。今後については、一般質問でも述べた通り、「中野サンプラザ的なものとは何か」という議論を区民参加で進めていくこと、その議論を後継施設の在り方にしっかりと反映させていくことが必要であると考えています。私としては、その過程で「一万人アリーナ」の可能性はなくなっていくのだろうと想像していますが、この点についてはまずはこれからの区役所・サンプラザ地区再整備推進区民会議で検証がなされる予定です。

個人的な話ですが、私の両親の結婚式は中野サンプラザでした。生まれる前から縁のある建物にこうした形でかかわっていることに、何か不思議な縁を感じます。学生時代には何度も好きなアーティストのライブに足を運びましたし、娘が生まれてからは子ども向けイベントに参加することも増えました。私にとっても家族の思い出がたくさん詰まった建物です。中野サンプラザの行く末が議論になって以来、多くの方にサンプラザにまつわる思い出話を聞かせていただきました。前区政のような「大きいことはいいことだ」といった発想ではなく、「記憶」や「愛着」といったものを大切に考える再開発にしていくべきと感じています。いずれにしても、多くの区民の皆さんからご意見をただければと思っています。

最後に、少しだけ雑感を。
9月11日に「中野サンプラザ解体へ」と報じられて以降、様々なご意見をいただいたりSNS上での議論を目にしたりしました。解体への賛否はそれぞれですが、結論そのものへのご意見とは別に、「決定過程が不透明である」というご意見を多数いただきました。そうしたご意見をいただいて、私自身、「目線が下がっている」ことを感じました。
議会閉会中に区長が毎週区民と対話する場を設けたり、前区政では出てこなかった情報が出てきたりと、区長が代わったからこそ出来たこともたくさんあります。私にとっては大きな変化に思えましたが、多くの区民にとってそれは「前区政に比べるとマシ」程度の話なのだなと理解しました。より積極的な情報公開と丁寧な対話の方法を考えていきたいと思います。

もう一つ、改めて感じたのが、「数字的な根拠」なしに判断することの難しさです。国政では、内閣支持率や個別政策への賛否が定期的な世論調査によって明らかにされます。その数字は多くの国会議員から注目され、政策の行く末を左右することも珍しくありません。他方、区政ではそうした数字はなかなか出てきません。酒井区長の支持率も、中野サンプラザ解体への賛否の割合も、数字としては示されないのです。「区民の声が中野サンプラザ解体反対一色という状況ではない」という理解も、私が自分の活動を通じて得た皮膚感覚にすぎません。「政治家としての感覚の見せ所」という言い方もできるのかもしれませんが、出来れば政策決定はエビデンスに基づいて行いたい、というのが率直なところです。この点も、今後の課題だと思っています。

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