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社会資本整備総合交付金活用のあり方について〜決算総括質疑報告その1

中野区議会議員の森たかゆきです。

中野区議会第3回定例会決算特別委員会での私の質疑の内容を、何回かに分けてご報告します。

1回目は、「社会資本整備総合交付金」についてです。
あまり馴染みのない言葉でとっつきにくい印象を受けるかと思いますが、国土交通省の様々な補助金を原則一本化した補助金として平成22年に創設されたもので、区内の公園や施設の整備など様々な事業に活用されています。自治体にとっては、「自由度が高く、創意工夫を生かせる総合的な交付金」であるとされています。
http://www.mlit.go.jp/common/001126757.pdf

この補助金の交付を受けるには、「社会資本整備総合整備計画」を作成し国に提出する必要があります。この整備計画は住民に公開しなければならないので、中野区のHPにも掲載されています。現在中野区単独で活用している事業は「【第二期】安全で快適に住み続けられる活力あるまちづくり」「中野区南部地区都市再生整備計画」の2つです。(他に東京都と共同で活用している事業もあります。)

この2つの計画を見てみると、「【第二期】安全で快適に住み続けられる活力あるまちづくり」は全体事業費177億円に対して、「中野駅乗降客数2万人増」「中野駅北口改札前歩道部の歩行者流量を45人/m・分から27人/m・分に」「中央部地域の一人あたり公園面積0.21m²増」「中野通りの荷捌き駐車台数を9台から6台に減らす」「野方駅・都立家政駅・鷺ノ宮周辺地区の人口に対する地元のまちづくり組織による報告会等の参加人数の割合0.27%」という定量的な指標が設定されています。事業規模に比べて成果指標のスケールが小さいような印象を受けます。http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/163000/d022555_d/fil/syashi.pdf

「中野区南部地区都市再生整備計画」の方はそれがより顕著で、全体事業費121億円に対して設定された定量的指標は、「地域の活動に参加した区民の割合を16.4%を17%に引き上げる」「区民意識意向調査の、対象地区における『災害時の安全性』評価を2.58から2.70に向上させる」「区民意識意向調査の、対象地区における『公園や広場』に対する満足度を2.51から2.60に向上させる」となっています。http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/101500/d017702_d/fil/001.pdf

今回の質疑では、まずこの事業規模と成果指標のスケール感のギャップについての区の認識を質しました。答弁は「交付申請に際して国交省と協議をして設定した指標だからこれで適切なのだ」といったものでした。確かにこれは社会資本整備総合交付金の交付を受けるための計画で、実際に既に交付を受けられているのだから問題がないといえば、それはその通りではあります。

問題は、これから先もこれで通用するのか、ということです。

冒頭に書いた通り、社会資本整備総合交付金は自治体の「自由度が高く、創意工夫を生かせる総合的な交付金」です。これは、自治体にとってはありがたい反面、国から見ると、優先度や費用対効果に疑問のある事業に使われているのではないかという疑問が出てきます。
そうしたこともあり、平成22年に創設されて5年経ったタイミングで会計検査院のチェックが入っています。ここでは、「公表されるべき情報が公表されていない」「指標の設定が不適切」「費用便益比が算出されていない」「地元の機運の検証がされていない」「必要な書類が揃ってないのに国交省が受理してしまっている」等々、様々な問題点が指摘されています。
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/28/h280217_1.html
さらには、経済財政諮問会議の歳出改革ワーキンググループでも議論の対象になっていて、そこでは、「効果が薄い、緊急性の低い事業が入っているのでは」「不用額の発生や契約の不調などが多く出てきる」といった点が問題視されています。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg2/271028/shiryou1-2-2.pdf

この点について質すと、これまで通り国交省と事前に協議していれば大丈夫といった趣旨の答弁が返ってきたのですが、果たして本当にそうでしょうか。
先に紹介した会計検査院の調査レポートでは、その「所見」の冒頭で「地域住民の意向の把握とその計画への反映のための方策を講ずること」が求められています。この指摘が制度化されていけば、地域住民の合意がなければ事前の協議の段階で交付申請を諦めなければならないケースも出てくるのではないかと考えられます。そして、地域住民の合意を得るには、計画の策定段階から計画対象地域の区民の皆さんと意見交換を重ね、指標についても事業の意義をわかりやすく示すものを設定していく努力が必要です。100億円以上かけて地域活動に参加する区民の割合を0.何パーセントか高めるといった計画では、なかなか理解は得られないでしょう。

今回は決算の質疑なので「財源の確保」という観点で質疑をしましたが、より本質的には、地域住民の住環境の向上につながる整備計画を策定し実行する責任を区が如何に果たしていくかということこそが問われています。その点から言うと、住民よりも国を見ているのではないかと思ってしまうような答弁が多かったのが非常に気にかかりました。今後も、様々な事業で社会資本整備総合交付金の活用が予定されています。それぞれの事業で、しっかりと地域住民の意向が反映された計画が策定され、そして、着実に財源の確保が進むようチェックしていきたいと思います。

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